ことばのはなふぶき1:詩を書きます。

詩を書きます。

どこかで
だれかが
朝起きて
わたしに話したいと思うことが
あったなら
どんなに嬉しいことでしょう

わたしは
あるのです

わたしの家で
朝起きて
あなたに話したい
ちいさなことが

鳥の羽繕い
薔薇の実のいろのこと

嘆きごとはやめて
ちいさなことばかり
そして
嬉しいことばかり

わたしの家で
朝起きて
あなたにも知らせたいことごとの
嬉しさに
詩を書きます。


老年

綺麗に食べ終えた
焼魚の骨
真冬の落葉樹の
枝ぶり

身についたものを
削ぎ落として
削ぎ落として
あれほど堅牢なかたちの
老年に入れるか
どうか

ちいさなひかりを
咲き終えて
綿毛のたんぽぽ
夢だけでこしらえた
頭蓋骨

あれほどすきとおった思いで
ひととき
吹き散らす風を待てるか


垣内磯子