小さなこだわり重ねて:宮崎駿

お次は「魔女の宅急便」

吉祥寺のスタジオで、監督でまた作家でもある宮崎駿さんは、左手に手編みの肘当て、サンダルばきで登場。
「ナウシカ」「ラピュタ」「トトロ」と子どもたちの合言葉になっているアニメ。続く「魔女の宅急便」は、ホーキに乗ったキキが魔女のイメージを大変身させることでしょう。

宮崎さん家の犬の名前はムク。なんだか愛犬ぶりが描けます。というのは、「そういえば家族におかえりなさいは言われたことがない」宮崎さんは、ムクのための汁かけご飯を食べてしまったりするらしい。

気晴らしの散歩のお伴のムクは、「トボトボ、ヒーヒー、ハーハー言って」完成する大画面の連続が、ほんの小さなこだわりを幾重にも重ねて生むアニメーターの孤独を知っているかもしれません。

「オヤジとして恥ずかしくないものを作りたい」と、笑いながら、しかし毅然と宮崎さん。真摯な父親像がみえました。

vol.14(1989年7-8月)より