東西お寺の今昔対談

イントロダクション

高浜: チャプター2として、東西お寺の今昔対談に移りたいと思います。地図の右下に深大寺があります。二つのお寺は非常に古く、深大寺は733年から、武蔵国分寺は741年に建立の詔が出ています。張堂さんと星野さん、夢の対談ができて、私も楽しみにしております。

深大寺と武蔵国分寺

星野: 武蔵国分寺は最大規模の国分寺だったと言われています。なぜ国分寺市のあの地に建てられたかというと、国分寺崖線により四方を四つの神(玄武、青龍、朱雀、白虎)に守られていると考えられたからです。「はけ」の自然と極めて関係が深いのが武蔵国分寺です。

子供の頃は今よりも水量が多く、自然が豊かでした。お鷹の道の湧水は全国名水100選に選ばれましたが、守っていかなければいけません。湧水にちなんだ真姿の池の伝説などを通して、自然や歴史に親しんでいただくのもいいですね。

張堂: 深大寺は野川の流域で湧水が最も多いと言われています。川の名前を付けた方がいいなというほど出てきます。知らない人からは「どうしたんですか、水道を直した方がいいですよ」とか「もったいないよ元栓をしめないと」とか言われます(笑)。

イベントを通して

星野: 深大寺というとおそばで、おそばの学校をやられているとか?

張堂: 深大寺よりそばの方が有名です。お寺はどこにあるんですか?と(笑)。麺ブームというのでしょうか、そのブームにのったんでしょうか。でもそば自慢はしてはいけないんですね。そば自慢はお里が知れると言います。やせた土地でそばができます。そばの学校を5年やって、そば学院ができました。畑もやるんです。

星野: お寺や地域に関心をもってもらうイベントなども大事ですね。市長になる前はまちおこしに関わりました。33年前には「歴史、自然、人との出逢い」をテーマとする「万葉花祭り」を始めました。最近は「ぶんぶんウォーク」というイベントも多くの方が参加し行われています。いずれも、市民の手作りというのが特色です。

市長としては姿見の池の復元があります。湧水が枯れていた池に武蔵野線の湧水を引きました。武蔵野線は地下水脈を切断していて、最初はその水脈を下水道に流していたんです。国分寺市はJRから下水道料金をいただいていました。多い時で2億円です。しかし、そんなにきれいな水を下水に流すなんてもったいないと、その水をポンプアップして姿見の池に、そこから野川に流すことにしました。小金井や三鷹には、国分寺から2億円の水が流れていっているわけです(笑)。その話をすると、最近2億円の水が流れてこないとか、梅雨時は流れすぎるとか、いろんな声をいただくようになりました(笑)。

張堂: 調布の真ん中に野川があるんですけれど、案外みんな知らないんです。5年前野川で灯篭流しを実現しました。仏教の他にキリスト教も声掛けを。神社にも。讃美歌を歌って、お経を唱えて、祝詞を唱えて、でも違和感ない。1000基流しました。野川全域でそういうことをやれれば、連帯ができるのではないかと思いますね。

自然をどう守っていくか。土地の人が亡くなると相続の問題があります。環境を守るには、「お寺さん、土地を買ってください」と今まで見えました。私が住職になって、空いている土地をお寺で買いたいと言いました。そこで投資をしますと。それでかなり買っていきました。別に(開発を)阻止するわけじゃないですが、向こうの願いですから、お寺さんが使ってくださいと。

自然を守る仕組み

星野: 相続に伴う農地の処分は大きな問題です。国分寺は26市の中で畑の割合が清瀬に次いで2番目です。都市農業が盛んです。畑はまさに天然の雨水浸透マスですから。土地農地保全推進自治体協議会というのを作り、成果も上がりつつあります。現国分寺の隣の土地が開発の危機に瀕した時には公有化しました。そこは今、お鷹の道湧水園です。おたカフェは高浜さんに運営をやっていただいています。

また、真姿の池の上に大きなマンションが建つことになった時には、「杭を打たせては悔いを残す」と一部を公有化しました。市民の力も大きかったです。崖線の自然を守るには行政と市民、事業者の連携が重要です。国分寺市は崖線や湧水を守る条例を作りました。国分寺市だけではなく、広域的な連携がないとできません。そういった、ある意味強制力のある仕組みをつくらないとうまくいかないと思います。

張堂: 世の中が変わるときにどう乗り切るかというのがありますね。深大寺も危機があり、大きな遊園地が来る計画がありました。もし来ていたらにぎやかすぎるでしょうね。お経をあげていたらジェットコースターが悲鳴をあげて回っているという(笑)。ですから世の中が動くときにどう守るかということですね。大掛かりなジオラマを測量して作ったりもしました。

こういう自然環境は壊すともとに戻りません。東京においてこういう環境は大きな宝物のような気がします。住職は自分でいろいろ決めてしまえるからなかなかいいもんですよ。市長や都知事は大変です(笑)。もちろんいろいろ協力をいただかないといけないと思います。豊かな環境を次の世代に残したいですね。

星野: 先ほど道路の話が出ましたけれど、都道328号線という、府中から国分寺を通り小平に抜ける道路計画があります。自然を守ろうと反対運動がおこりました。自然保護は大事ですが、同時に大渋滞も解消しなければならなりません。それぞれの立場で利害が対立します。ですから、こういうシンポジウムのような場をできるだけもって、お互いの立場を理解するのも大事なことかと思います。我々のおしゃべりが、後に生きることを願います。

Chapter3:これからの地域連携