質疑応答とまとめ

Q&A(質疑応答)

尾崎: みなさんからたくさんの質問をいただきました。

Q: 野川調整池が保全地域に掲載されていないのはなぜですか?

藤田: 緑地を保全する制度は、法律に基づくもの、条例に基づくもの等いろいろあります。東京都の保全地域にはなっていないけれども環境を保全していく場所ということになるかと思います。

Q: はけの水源は?

林: 野川水系は武蔵野台地に降った雨からです。ローム層に浸み込んだ雨水が、浸み込まない粘土層から、地下水、伏流水となって、はけのように出られる場所から出ます。非常に広範な水を集めています。

尾崎: 地下水とみずみちについて、藤木さんに伺ってみたいです。

藤木: これもなかなか見えないから難しいですが。水道水のうち井戸水の割合は、昭島で100%、国分寺は60%でした。今はそれより減っていると思います。地下水を守ろうというのは、それが飲み水でもあり、土地を潤してもいるという意味でもあります。

Q: 「はけ」のライブラリについて聞きたいです。第1号はどこになるのかということと、崖線というと武蔵村山なども入るのですか?

土肥: はけのライブラリ第1号は、おたカフェとプラウドさんです。それから崖線をどこまでかというのについては、おっしゃるように武蔵村山などの可能性はあると思いますが、あまり大きくして話がつながらなくなるより、できるところからと考えています。

まとめのコメント

尾崎: 「はけ」は、湿地を伴う斜面地ですから、建設などの利用の面で言えば金銭的価値は一般的に低いわけですが、そういう価値尺度ではない見方が必要ではないでしょうか。東さんはどのようにお考えですか。

東: 本質的に価値があれば、今日、今、何らかの方法で置き換えていくことが可能だろうという仮説をもっています。それをどういう形に変えていくか、それは個々人の工夫だと思います。不動産市場ということでいえば、市民、行政、NPOなどに期待したいのは、「はけ」の価値を、いかにみんなに共有できる価値に変換できるか、どういう評価基準を作れるかということです。可視化が大事かと思います。

尾崎: ありがとうございます。挑戦的なメッセージもいただきましたので(笑)、残りの皆さんから最後のコメントをいただきたいと思います。

林: 今われわれが生きているうえでの価値や目先の損得はもちろん大事ですが、長い年代の研究をやっていると、やはり考えるのは未来のことです。これをビジョンに入れていかないと後悔するのではないかと思います。

土肥: 私も刺激を受けました。はけの現場に関わっている方々がその価値を日々沢山発見していると思います。しかし、それを市民、企業、行政と共有できていないことが課題かと思います。「はけ」をひとつのプラットフォームとして捉えて、こうしたシンポジウムのように、その価値を共有する取組みを進める必要を痛感しました。

徳永: 雨水浸透マスは理解が得られています。中には家を買ったらついていたという、知らない方もいます。こういった場で、市民の方々に理解を得られたらと思います。50年、100年の継続ができたらと考えております。

藤田: 行政の立場として何ができるのかというのを常に考えています。開発と緑を守るのと、どうやって両立できるか。またそれには地元の方々のお力添えが大事であると思っています。このシンポジウムが、ひとりひとりが何ができるのかということを考える機会になればと思っています。

瀧本: 小金井市でもJRの高架化でいろんな再開発があります。高層マンションの計画では、環境市民会議から地下水を守ってほしいという要望書を出しました。それに答える形でデータをくださいと言われ、モニタリングしたいとありました。企業も変わってきていますよね。市民も行政も、対立から融和というか、新しい答えを探していくような時代になってきているのかなと思います。

藤木: 市民は現場に関心をもちながら調査を続けるしかないかなと思います。ずっと住んでいる住民が提言することは重要かと思います。同様に若い世代の参加や、学生さんを巻き込めればと思いました。東さんの話で、私たちが裁判したころはそんな感じに全然ならなかった。別の業者ですし、何年も前ですし。話し合う場があると非常にいいかなと思います。開発と自然を守るのは難しいですが、今日は勉強になりました。

尾崎: ありがとうございました。「価値」がひとつのキーワードとなったように思います。林先生のお話にもありましたが、縄文時代は環境の範囲内で生きてきました。そういう時代が長く続いていたと思います。今は関心がうすれがちです。そういう意味では、今の時代に合わせた新しい価値を見つけること、それは未来への投資なんだということがありました。共有できるプラットフォームを作り、広い視点で話し合って、引き継いでいくのがわれわれの役割かなと思いました。

高浜: ありがとうございました。「はけ」だけではなく、視点を広げられればとも思います。以前は対立があったかもしれませんが、これからはみんなで協調して、新時代をこの場からスタートできればいいなと思っています。皆様今日はありがとうございました。