ことばのはなふぶき2:野草園

陽ざし:島峰譲

野草園

ほんのちいさな双葉だけでは
なんの芽生えか
決められません

毎日おこる出来事も
どれが喜びの種からでた芽だか
その時すぐには
わかりません

ちいさな芽生えをそれぞれに
喜びの芽かもしれないと

抜き去らないで
そのままに
水をやるのが楽しみになりました
草ぼうぼうの
わたしの
野草園


あきらめる

谷底に落ちた金貨が
山吹の花に変わったのだという話を
ききました

落としたもの みんな
なくしたもの みんな
どこかで
花に変わっているのなら
あきらめられる
気がします


三月

誇らしげにひろげた
指のいっぽんいぽんに
芽吹きの指輪をはめて
落葉樹はみな
空と婚約した気でいます
ああ三月は
眩惑と願望に満ち満ちて


垣内磯子