水物語5:野川は一本

野川は一本

東京の中でも貴重なグリーンベルトである、国分寺崖線に沿った野川を愛する人は多い。
去る5月14日、流域の5市1区の自治体が世田谷区次大夫堀公園で「野川流域環境保全協議会」を結成。 清流復活、自然林、湧水の保全を目的とした情報交換や整備事業など、行政間の横のつながりの場が持たれ、「野川は一本」という当たり前を再確認した。
ところで川の水、つまり公水の所有権は建設省、管理は都が行っている。 溢水対策としての施設はコンクリート三面張りの水路や調節池に見られるように、環境保全、エコサイクルの面から考慮されていないのが実情だ。 水質悪化防止の筈の下水道も完備すると、一方では川の流量減少となった。水が少なくなれば川は自浄作用を失ってしまう。
雨水浸透マスをはじめ雨循環への提言は徐々に広まってはきたが、固定資産税問題で切られる雑木林、宅地、道路など不浸透部の増大は一段とはやく、湧水の枯渇が懸念される中行政サイドの問題は山積している。
野川の存続は、東京が本当に人間の住む街として存続するかどうかということである。 「野川は一本」、誰の所有物であってもならないだろう。

原田いづみ