紙ヒコーキ:尾辻克彦

「東京路上観察」の赤瀬川原平さん。青春時代は武蔵野ぐらしでしたネ。記憶の中の風景をひとつ・・・。

尾辻克彦(作家・画家、又の名・赤瀬川原平)

●幻のローラースケート通り

東京に出てきてはじめて住んだのが武蔵小金井だった。駅の北口から10分か15分歩いたところの6畳の部屋に、友人と二人で住んだ。

それをさらに歩いていくと、桜並木の広い通りに出た。いま考えたら五日市街道である。車がほとんど通らないので、これはローラースケートをしたいなあ、と思った。

生活の余裕もなく出来なかったが、いまではもうその通りは車がぎっしりである。

いま想うと、あの静けさは夢のようだ。

vol.3 (1987年9月)より


ナツアカネの産卵(松山史郎)