ライバルは自動販売機:鶴巻麻由子

火鉢をのせたリヤカーが街をゆく。車を引くは25歳、女子。

華奢なからだ。大学を卒業して2年足らず。「出茶屋」の醍醐味は、超スロー、超ローカル。鉄瓶でしゅんしゅん湯を沸かす。豆をごりごり挽き、コーヒーを淹れる。炭火の暖気が、客を包む。

「なんたって人力車、水や火鉢を積んだ重いリヤカーを引いての遠出はムリ。だからこそ、地元密着。“ここにしかない”ものになりえると思う」

どうせ足で移動するなら、エネルギーは最小限にこだわろう。スローな屋台には炭が合う?と試してみたら、いけた。火力はガスに負けない。

神保町の喫茶店で働くうち、世代をこえたコミュニケーションの楽しさにはまった。バックパックでぶらり旅をするのも好き。コーヒー店と外歩き、ふたつを一緒にできたら素敵だな・・・と思っていた。

引っ越してきた小金井市の掲示板で、たまたま目にした「夢プラン(商工会助成)」に屋台を応募したら、見事合格。

「漠然と考えていたことが、合格したことで急にまわりはじめた」

現在保健所に出展許可申請中。目下イベントに顔を出しては、地元の人を暖めている。

屋台「出茶屋」主

vol.107(2007年1-2月)より