今が「高揚」の季節です?!

見切りをつけない

「有縁」「渇愛」・・・と馴じみ薄い言葉が張りのある声となって場内に満ちます。
いつもは18歳から22歳の娘さんたちばかりの学内に、寂聴さんを迎えて年配の男女圧倒的多数、の満員の武蔵野女子大の雪中講座でした。

「自分に見切りをつけない。死ぬまで可能性はある」という瀬戸内寂聴さん。長い作家生活の中にあって、68歳を迎えた今ほど書くことに「高揚」している時はないと情熱的な一時間余の講演のこの日、 午後からは母校の東京女子大でも、と講演会のダブルヘッダーでした。
武蔵野は久しぶりに?とうかがうと、

「前田愛さんと『武蔵野夫人』の舞台を訪ねただけでね。三鷹に住んでいた当時の様子は、車窓から見る辻にひょっこりのぞいて。でも、すっかり変わりましたね」

瀬戸内さんが武蔵野に住んで書いた「夏の終わり」は、第二回女流文学賞を受賞しています。瀬戸内さん41歳の時。

季節ごとの華を作品にも生活にも咲かせていらっしゃいます。

瀬戸内寂聴

vol.18(1990年3-4月)より