スリムなマイ・ファット・フレンド:加藤健一

今日は「いい男」に会えるぞ!こういうのをオバタリアンというのかな?!慎み第一とばかりにおさえて、ドアをノック・・・。

迎えられた目千両の面ざしに、少々「ドキッ」。思わず「美貌ですね、画面よりずっと――」

加藤健一さん。昨年はテレビドラマ「窓を開けますか」が好評。松坂慶子扮するヒロインに、最後までゴールインにならず、はがゆい思いをした人も多いハズ。
毎週楽しみにしてました、と言いますと独特の微笑。これが加藤さんのトレードマークかな。

主役というよりアクの強い役どころが多い。が、目の前の加藤さんはソフトで、限りなく「二の線」に近いのでした。

「舞台の人はね、演出家が面白がってひねられるんです」

今年は舞台オンリーになるでしょう、という。新作は「マイ・ファット・フレンド」。4月1日から13日まで下北沢本多劇場にて。

「芝居は今、ブーム。観客も、いい劇場も増えている」

プロデュース公演は満員御礼。事務所は高円寺駅前のガラス屋さんの地下。劇団員は加藤健一ただひとり。生徒が30人。

「プレッシャーが段々整理されて快感に変わっていく。体を素材にして、芝居で一生その快感を得られるかどうか」

芝居の魅力を淡々と話してくださいます。著書に「俳優のすすめ」があり、

「役者は10年が勝負。10年間を没頭できるか。そして楽しめるか。 僕はワガママなんです。何にもしたくない。基本的には遊んでいたいから、芝居をする。その確保のためにガンバル」
哲学的遊び人。

“女優”という言葉に対するのは“男優”。生活臭があるようでないようで。「妻帯者ですか?」なんて聞いてしまって笑われて・・・。

加藤さんはきっと役の中に素顔を見せている。と、ドアを閉めるときにはミーハー気分がふっとんでいました。「マイ・ファット・フレンド」が楽しみです。

vol.12(1989年3-4月)より